南アフリカ共和国の国旗

南アフリカ共和国の旗は1994年4月27日に採用され、緑色の「Y」の形をしたデザインで構成されています。「Y」の上端は2つの頂点に分かれ、その間に黄色い縁取りの黒い三角形があります。旗の上部は赤、下部は青で構成されています。

南アフリカ共和国の旗の意味

旗の全体的なデザインは、分裂から統一への移行を象徴し、平和、平等、共有された繁栄を表しています。南アフリカの旗は、単なる色や形の組み合わせではなく、複雑な過去と調和と統一への道のりを物語っています。それぞれのシンボルには特別な意味があります:

• Y字型のシンボル - この形は、以前分裂していた社会の統一を象徴しています。

南アフリカはかつて、人種隔離とアパルトヘイトによって分断されていました。人種隔離とは、肌の色に基づいて人口をグループに分ける強制的な分離です。この分離は学校、病院、バスなど、すべての公共施設に及びました。黒人は白人と同じ労働条件や住環境で生活することができず、同じ地域に住むことも許されませんでした。
アパルトヘイトは、1948年から1990年代初頭まで南アフリカで実施されていた厳しい人種差別のシステムであり、この体制下では「白人」が国を支配し、完全な権利を有していた一方で、「黒人」は投票権、共同生活の権利、異人種間結婚の権利などが制限されていました。

その結果、南アフリカは2つの主要なイデオロギーに分断されました。アパルトヘイト（白人少数派の支配）と平等のための闘争（アフリカ民族会議（ANC）やその他の反アパルトヘイト運動）です。また、南アフリカには文化的および民族的な多様性があり、これにはアフリカ諸民族（ズールー族、コーサ族、ソト族など）、ヨーロッパ系の子孫（アフリカーンス人、英国系）、インド系や混血のコミュニティ（カラード）が含まれます。それぞれのグループは歴史的に独自の道を歩んできました。

そのため、Y字型は、2つの道が1つに集まり、新たな道への統合を示しています。この統合は、過去の対立を乗り越え、調和、平等、協力を目指す国の共通の未来を象徴しています。

• 緑色は、国の肥沃な土地を象徴し、解放運動やアフリカ民族会議（ANC）と関連しています。このため、「Y」の部分が緑色になっています;
• 赤色は、自由と独立のための闘争で流された血を象徴し、植民地時代や内紛の犠牲者を讃えています;
• 青色は、広大な海、空、平和、未来への希望を象徴しています;
• 黒色は、文化的多様性とアフリカの遺産への誇りを表しています;
• 白色は、異なる民族間の平和と調和を象徴しています。

これらの色はまた、異なるグループの国家的シンボルとも関連しています。緑、黄色、黒はアフリカ民族会議の色であり、赤、白、青は伝統的にヨーロッパの植民地勢力（イギリス帝国の旗）やボーア人の旗（オランダ系最初の入植者）で使用されていました。特に、19世紀の南アフリカ共和国の三色旗もこれらの色を含んでいます。

南アフリカ共和国の旗の歴史

旗と聞くと、風にたなびく布を思い浮かべますが、植民地化以前の時代には、シンボルに対する考え方は全く異なっていました。それは美的な装飾ではなく、部族ごとの自己認識を表す重要な役割を果たしていました。例えば、伝統的な模様の入った布や盾は、一種の「旗」として、英雄的な行為や精神的な信念を伝えていました。先住民は、空、大地、太陽、川を「色」として選んでいました。

最初のヨーロッパ人が到来すると、シンボルは徐々に変化し始めました。1652年、オランダ人が大陸の南部に到着し、「プリンス旗」（オランダ語：Prinsenvlag）と呼ばれる、オレンジ、白、青の3本の水平ストライプの旗を掲げました。この旗は、オランダ連邦共和国を象徴し、オランダの拡張の最も有名なシンボルの一つでした。しかし、ケープ植民地では、オランダ東インド会社（VOC）用に特別に作られたこの旗の適応版がより頻繁に使用されました。

ケープ植民地は、南アフリカ南部で最初期に設立されたヨーロッパの植民地の一つであり、ヨーロッパとアジアを結ぶ戦略的な航路を巡る争いにおいて重要な地域となりました。ケープ植民地は1652年、オランダ東インド会社によって設立され、インドに向かう船舶に食料、水、修理を供給する中継基地として利用されました。この活動の起点は、現在のケープタウン付近にある拠点で、ヤン・ファン・リーベックが最初のオランダ人入植地を指揮しました。

オランダは当初、基地の設置だけに留める予定でしたが、徐々に先住民から土地を奪う形で植民地の領土を拡大していきました。

ケープ植民地の旗は3本の横縞が特徴でしたが、中央にはVOCのモノグラムが追加されていました：

• VOCモノグラム：「V」、「O」、「C」の文字が重ねられており、「Vereenigde Oostindische Compagnie」（オランダ東インド会社）の名前を表していました。
• 色：オレンジ色は次第に色あせに強い赤色に置き換えられましたが、南アフリカでは伝統的なオレンジ色のバージョンが主流のままでした。また、青色はより暗い色合いが特徴でした。中央の「VOC」の文字を除けば、これは現代のオランダ国旗と同様のデザインです。

1795年にイギリスがケープ植民地を占領した後、ユニオンジャック（グレートブリテンおよびアイルランド連合王国の旗）が公式の旗となりました。しかし、この旗の使用は植民地の行政状況によって変動しました。

1795年、フランス革命軍の支配下にあったオランダの政治的弱体化を利用して、イギリスは初めてケープ植民地を占領しました。ケープ植民地はインドへの海上ルートを支配するために戦略的に重要でした。イギリスは直ちに植民地の旗をユニオンジャックに置き換えました。当時のユニオンジャックは、イングランドとスコットランドの十字を青地に組み合わせたもので、1801年にアイルランドの赤い十字が追加される前のデザインでした。

最初のイギリス統治期（1795-1803年）には、ケープ植民地はイギリス商船の重要な拠点となりましたが、オランダの統治に慣れた地元住民は不満を抱きました。アミアンの和約に基づき、1802年3月27日に植民地はオランダ、具体的にはバタヴィア共和国に返還され、再びトリコロール旗（赤、白、青）が使用されました。

しかし、オランダのケープ植民地への復帰は短命に終わりました。1806年、フランスの支配下にあったオランダがイギリスに宣戦布告した後、イギリス軍が再び植民地を占領しました。この時期の重要な出来事はブラウベルグの戦いであり、これによりイギリスは戦略的に重要な喜望峰を掌握しました。第二次イギリス統治期は1815年まで続き、ナポレオン戦争の終結と関連条約の締結後、オランダはケープ植民地を正式にイギリスに譲渡しました。1815年以降、植民地は正式にイギリス帝国の一部となり、植民地の力の象徴はユニオンジャックに「変わらない」形で残り、特別な植民地の紋章はありませんでした。この旗は1876年まで植民地で使用されました。

1876年、ケープ植民地は公式にブルー・エンサインに基づく新しい旗を採用しました。この旗は左上隅（カントン）にユニオンジャックがあり、旗の右側には白い円の中に植民地の紋章、すなわちケープ植民地の紋章が配置されていました。この紋章は1875年5月12日に承認されたものです。

この紋章は、それぞれが独自の象徴的意味を持ついくつかの要素で構成されていました。

• 盾（シールド）: メインの盾は赤地に金のライオンが描かれ、周囲に3つの金の輪があります。盾の上部には銀色の水平帯があり、その上に青い円にそれぞれ配置された3つの金の百合が描かれています。これらの要素は、植民地がイギリス帝国とフランス王室とつながっていることを象徴していました。
• 紋章（クレスト）: 盾の上には希望の女神（ホープ）と錨の像があります。これは植民地の希望と楽観を象徴する寓意的な人物でした。
• 盾持ち（シールド・サポーター）: 盾の両側には野生動物が配置されています。左にはヌー、右にはジェムズボック（サーベル角オリックス）が描かれ、地域の豊かな自然資源を表しています。
• モットー: 盾の下のリボンには植民地のモットー「Spes Bona」（ラテン語で「良き希望」）が記されています。これは喜望峰を指します。

1910年、南アフリカ連邦が設立され、ケープ、ナタール、オレンジ自由国、トランスヴァールの4つの植民地が統一されました。この時の主要な旗はイギリスのユニオンジャックでしたが、公式用途のためにブルー・エンサインを基にした別の旗が作られました。

この旗は、青地の布にカントンにユニオンジャックを配置し、右側には南アフリカ連邦の紋章が描かれていました。この紋章は4つの部分に分かれ、それぞれが1つの植民地を象徴していました。

• ケープ植民地: 錨を持つ希望の女神の像で表されていました。
• ナタール: 2頭のアンテロープ（ヌー）で象徴されていました。
• オレンジ自由国: オレンジの実をつけた木で描かれていました。
• トランスヴァール: 開拓者の荷車で象徴されていました。

この旗は主に公式用途や政府建物、裁判所で使用されていました。しかし、この旗は一般市民の間で広く人気を得ることはありませんでした。英語を話すコミュニティにとっては、象徴は依然としてユニオンジャックであり、非公式に使用され続けました。一方で、アフリカーナーはブルー・エンサインをイギリスへの過度な依存の象徴とみなしていました。この旗に対する認識の分裂は、南アフリカの主要な2つの民族グループ間の政治的・文化的緊張を反映していました。

1920年代、国家の象徴問題がますます重要になりました。アフリカーナーは自分たちの歴史と闘争を反映した旗を求めた一方で、イギリス人はイギリスの象徴を保持することを主張しました。1925年、政府は新しい国旗の作成プロセスを開始しました。長い議論の末、イギリスとアフリカーナーの遺産を組み合わせた妥協案が採用されました。

この旗は1928年5月31日に正式に承認されました。等しい幅の3本の水平ストライプで構成され、上部はオレンジ、中部は白、下部は青でした。白いストライプには3つの小さな旗が含まれていました。左にはユニオンジャック、中央にはオレンジ自由国の垂直旗（カントンにオランダの旗があり、白とオレンジのストライプで構成）、右にはトランスヴァールの旗がありました。

トランスヴァールの旗はヴィアクラー（オランダ語で「4色旗」）と呼ばれていました。赤（上部）、白（中央）、青（下部）の3本の水平ストライプと、旗竿の近くにある緑の垂直要素で構成されていました。ヴィアクラーはトランスヴァールとしても知られる南アフリカ共和国の公式旗でした。
この旗はアフリカーナーとイギリス人の妥協として作成されましたが、アパルトヘイト時代の間に人種差別政策と関連づけられるようになり、黒人住民にとっては抑圧と差別の象徴となりました。

アパルトヘイトの終焉と1994年の最初の民主的選挙の後、南アフリカの団結と多様性を反映する現在の国旗が採用されました。